舟艇守りの尺八  大野孤山
炎熱の夏は去りて秋風来る
風は清し湘南逗子の渚
微かに聞く洞簫の遥かに漣を渡るを
杖を停めて耳そばだつれば千鳥の曲
斯の曲老来忘るる能わず
昔提督八代愛曲
四十五年一夢の中
哲人一たび去って復帰らず
一竿の零音能く昔を映して
竹に問う近代勇士の心
涙雲日を蔽うて将に人をして泣かしむ
秀麗見えざるは反って情あり
去らんと欲して? 徊去る能わず
室に入って簫を見れば純忠の士
低
吟 加藤岳洵